まず全体像をつかもう
特定技能人材の採用は、通常の日本人採用とは手続きが異なります。しかし、やるべきことを順番に並べると、流れ自体はシンプルです。
大きく分けると、「①準備 → ②募集・選考 → ③契約・支援計画 → ④在留資格申請 → ⑤入国/変更 → ⑥就労開始」の6ステップです。
国内に在留している外国人を採用する場合と、海外から呼び寄せる場合で手続きが少し変わります。この記事ではまず共通の流れを解説し、ルートごとの違いを後半で整理します。
採用までの6ステップ
自社が対象分野に該当するか確認する
特定技能は指定された産業分野でのみ利用できます。自社の事業・業務が対象に含まれるかを、まず確認しましょう。対象分野の一覧は前回の記事で解説しています。
求人を出して候補者を見つける
求人募集の方法に制限はありません。自社で直接募集することも、ハローワークや民間の職業紹介事業者を利用することもできます。J-rectのような特定技能専用の求人プラットフォームを使えば、対象人材に効率よくリーチできます。
雇用契約を結ぶ
候補者と特定技能雇用契約を締結します。報酬は日本人と同等以上であること、フルタイム雇用であることが条件です。契約書は外国人が理解できる言語での作成も必要です。契約後には健康診断の受診も求められます。
支援計画を策定する+協議会に加入する
特定技能1号の受入れでは、外国人の職業生活・日常生活・社会生活を支援する計画(1号特定技能外国人支援計画)の作成が必要です。自社で支援を行うか、登録支援機関に委託するかを決めます。また、分野ごとの協議会への加入も在留資格申請前に済ませておく必要があります。
在留資格を申請する
出入国在留管理局(入管)へ在留資格の申請を行います。国内在住者なら「在留資格変更許可申請」、海外から呼び寄せる場合は「在留資格認定証明書交付申請」です。窓口またはオンラインで申請でき、審査には通常1〜3か月かかります。
就労開始・届出
許可が下りたら就労開始です。生活オリエンテーションの実施、住民登録、給与口座の開設など、入社前後にやることがあります。また、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」も必要です。
「国内採用」と「海外からの呼び寄せ」の違い
特定技能人材の採用には、日本国内にすでにいる外国人を採用するケースと、海外から新たに呼び寄せるケースがあります。基本の流れは同じですが、在留資格の申請方法と入国手続きが異なります。
🇯🇵 国内在住者を採用
留学・技能実習などで日本に在留中の外国人が対象。在留資格変更許可申請を本人の住居地を管轄する入管に提出します。許可後、新しい在留カードを受け取って就労を開始します。
✈️ 海外から呼び寄せ
海外在住の外国人が対象。企業が代理人として在留資格認定証明書交付申請を行い、証明書を受け取ったら本人が現地の日本大使館・領事館で査証(ビザ)を申請。入国後に在留カードが交付されます。
国内在住者の採用のほうが、入国手続きが不要なぶん、スピードが速い傾向があります。一方で、海外からの採用は候補者の母数が大きいメリットがあります。どちらを選ぶかは、自社のスケジュール感や求める人材の条件によって判断しましょう。
採用できる外国人の条件
特定技能で雇用する外国人は、以下の条件を満たしている必要があります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 年齢 | 18歳以上 |
| 技能水準 | 分野ごとの技能試験に合格、または技能実習2号を良好に修了 |
| 日本語能力 | 日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験N4以上に合格(技能実習2号修了者は原則免除) |
| 在留期間 | 特定技能1号での在留が通算5年を超えていないこと |
| その他 | 保証金を徴収されていない、違約金契約がないこと 等 |
企業側が満たすべき条件
外国人だけでなく、受入れ企業にも満たすべき基準があります。主な要件を確認しましょう。
受入れ企業の主な要件チェック
登録支援機関とは?使うべき?
特定技能1号の外国人には、企業が支援計画に基づいた支援を行う義務があります。この支援を自社で行う体制がない場合、登録支援機関に全部を委託することができます。
登録支援機関とは、出入国在留管理庁に登録された機関で、支援計画の実施や各種届出のサポートを行います。初めて特定技能人材を受け入れる企業は、まずは登録支援機関を活用するケースが多いです。
| 自社で支援 | 登録支援機関に委託 | |
|---|---|---|
| コスト | 人件費のみ | 委託費が発生 |
| 体制構築 | 支援責任者・担当者の配置が必要 | 機関が対応 |
| 向いている企業 | 外国人雇用の経験がある企業 | 初めて受入れる企業 |
| 届出 | 自社で入管へ届出 | 機関が代行可能な部分あり |
改正行政書士法により、在留資格に関する提出書類を報酬を得て作成できるのは行政書士・弁護士のみと明確化されました。登録支援機関に書類作成まで依頼している場合はコンプライアンス上のリスクがあるため、書類作成は行政書士に依頼するか自社で作成しましょう。
協議会への加入を忘れずに
特定技能外国人を受け入れる企業は、該当する分野の協議会への加入が義務づけられています。現在は、在留資格の申請前に加入を済ませておくことが必須です。
協議会は、制度の適正な運用や外国人材の就労環境整備のために各省庁が分野ごとに設置しています。加入手続きには審査に時間がかかる場合もあるため、申請の1か月前には手続きを始めるのが理想です。
協議会に未加入の状態で在留資格を申請すると、差し戻しや不許可になるリスクがあります。採用を決めた段階で、速やかに加入手続きを開始しましょう。
採用にかかる費用のイメージ
特定技能人材の採用には、通常の採用コストに加えて制度特有の費用がかかります。金額は分野や状況により異なりますが、初めての企業が把握しておくべき主な費目を整理します。
| 費目 | 概要 |
|---|---|
| 人材紹介料 | 職業紹介事業者を利用する場合に発生(J-rectのような求人プラットフォームで自社募集すればこのコストを抑えられます) |
| 登録支援機関への委託費 | 支援を委託する場合。月額での支払いが一般的 |
| 在留資格申請の書類作成 | 行政書士に依頼する場合の報酬 |
| 渡航・住居費 | 海外から呼び寄せる場合の渡航費、住居の確保など |
| 協議会関連 | 分野により加入費・負担金あり(建設分野は月額の受入れ負担金が必要) |
採用にかかる費用を外国人本人に負担させることは禁止されています。保証金の徴収や違約金の設定も認められません。
まとめ ― まずは「求人を出す」ことから
手続きが多く見えるかもしれませんが、順番に進めれば難しいことはありません。最初のステップは、自社が対象分野であることを確認し、求人を出して候補者を見つけることです。
候補者が見つかれば、雇用契約 → 支援計画の策定 → 在留資格の申請 → 就労開始と、一つずつ進めていくだけです。登録支援機関や行政書士など、専門家の力を借りれば初めてでも問題なく対応できます。
次の記事では、「受入れ後に企業が負う義務と注意点」について解説します。